耐性菌の問題

耐性菌とは何か?

病気の治療には薬が使われますが、その中でも特に効果があるのが抗生物質です。
最初の抗生物質はペニシリンであり、青カビから発見されました。
カビは抗体を出して、細菌が近づいてくるとその活動を無力化してしまします。
この性質を利用したのが抗生物質です。

抗生物質が発見されると、その当時治療不可能と言われていた結核などの病気が治るようになり、例え結核にかかったとしても死ぬことが無くなりました。
それからは抗生物質探しが始まり、通常の薬では治らないという病気に対して有効な抗生物質が続々と発見されます。

細菌を無毒化する抗生物質ですが、細菌の増殖スピードは凄まじく速く、その増殖段階で突然変異を起こして今まで効果的であった抗生物質で無毒化しないようになります。
これが耐性菌であり、まさしく進化の賜です。
一度その抗生物質に耐性を持ってしまえば、どんどん増殖を繰り返し耐性菌が増えていきます。
やがてその種類の細菌全てが、耐性のある抗生物質は効かなくなってしまうのです。

細菌と人間のいたちごっこ

抗生物質と細菌の戦いは、ペニシリンが発見されてからすでに始まりました。
ペニシリンに耐性のある結核菌が登場すれば、今度は人間側はさらに違う効果のある抗生物質を探しだし、新しい抗生物質が発見されるとまたそれに細菌が耐性を持つという、まさしくいたちごっこが続いています。

現在問題となっている耐性菌は、バンコマイシンに耐性のある菌であり、現在はこの耐性菌に対する抗生物質は1つか2つしかありません。
もしもこのままバンコマイシンに耐性菌が、さらにこれらの抗生物質にも耐性を持てば、人間はこの菌に対抗できなくなります。

耐性菌が出現してしまう背景には、容易に病気に対して抗生物質を使うことがあります。
抗生物質は病気になった場合の他に、予防のためにも使われることもあり、これが耐性菌を誘発します。
抗生物質を使う機会が多ければ多いほど耐性菌は出来やすくなりますので、抗生物質を使わなくて済むときは使わないに越したことはありません。

またとりあえず薬を出しておこうという医師にも問題があり、また患者ももらった薬が余っていると、前にもらったので使っておこうという人もいます。
このような安易な行為も耐性菌を出現させる要因になります。
現在は抗生物質の最後の砦と言われている「カルバペネム」があり、これにも耐性を持つ菌も報告されています。
抗生物質は長く使われるものでないので、製薬会社にとって利益も薄く、その点も開発が積極的でなくなっている背景があります。
このまま行けば細菌の進化のスピードの方が早く、抗生物質の開発が間に合わないということもあるかもしれません。