薬学部が新設されにくい理由

先日、薬剤師に興味があるという学生さんに会いました。長野に住んでいるので、長野の大学に進学したいと考えているそうです。長野といえば、長野大学や信州大学でしょうか。特に信州大学には新しく食事付きの学生寮ができるらしくて、心惹かれていると言っていました。

こちら👉信州大学(松本キャンパス)のための学生寮

薬剤師になるなら学部選択が第一条件ではありますが、親元を離れて暮らす場合は、衣食住の快適さもおろそかにはできません。缶詰になって勉強することも多いので、栄養管理士がいて食事をつくってくれるのは素晴らしい学習環境だと思います。

とはいえ、そもそも長野県には私立を含めて薬学部がありません。今後も薬学部が新設されるとは考えにくい状況です。特に、国公立大学である長野大学や信州大学に薬学部が設置されることはないでしょう。

薬剤師の有資格者は飽和状態

「薬剤師は慢性的に不足している」と言われるのを耳にしたことがあるかと思いますが、どうして薬学部は増えないのでしょうか。

実は、有資格者の数だけを見たら、すでに供給のほうが上回っているほどの飽和状態だから。すでに供給のほうが多いので、今は薬学部を新設する必要がありません。

2022年10月時点で、薬学部を持つ日本の大学は、全国では合計79校です。
(国立14大学、公立5大学、私立60大学)

特に私立大学では薬学部が乱立されています。その結果、定員割れを起こす私立大学も増えていて、定員を削減するところもあります。2028年には15万人もの薬剤師があまるといわれていて、薬剤師が飽和する未来は避けられないでしょう。

薬学部が新設されることはある?

とはいえ、慢性的な薬剤師不足に悩んでいるエリアもあるため、薬学部の新設を検討する都道府県もあります。薬学部がないのは15県。中部エリアでは長野県・山梨県・福井県が該当します。

薬剤師の数が全国でもっとも少ない沖縄県では、琉球大学(国立)に薬学部を設置するべく、「薬学部創設を求める活動」を進めています。

それは、沖縄には薬学部が存在せず、離島であり、薬学部への進学は経済的負担が大きすぎるからです(国公立は倍率が高すぎて、私立大学に進学する可能性が高い)。薬剤師を県内で育てる負担が大きすぎるので、県内に薬学部を作る必要性が強いということですね。

「薬学部が県内に存在しない」という点では長野も同じですが、沖縄とは事情が異なります。なぜなら、長野に隣接する7県(山梨県以外)には薬学部のある大学が16校もあるからです。

こちら👉薬剤部紹介|信州大学 医学部附属病院 薬剤部

このように、各都道府県の薬剤師の現状を鑑みて、薬学部の設置が検討されることはあります。ただ、新設されるとしてもすごく時間がかかるので、これから薬剤師を目指す方は、すでに薬学部のある大学を受験することをおすすめします。